National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST) This page is a page of the former research institute. We stopped updating on March 31.2001.
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イオン・トラップ

単一イオンを静止させて観測
−トラップされたイオンのレーザ冷却技術を確立−

量子部量子計測研究室では、より高精度な周波数標準の実現を目指してイオントラップの研究を行っている。最近、同研究室では、イオンを真空中に一個だけ静止させて観測することに成功した(計量研ニュース、1995年11月号)。超高真空中の単一イオンは周りから受ける影響が小さく、これを利用した周波数標準では、その正確さを今までのものと比べて100倍以上向上できるといわれている。

観測したのはイッテルビウムという金属原子のイオン。まず、イオンを3つの電極で囲まれた空間に閉じ込める。(この装置のことをイオントラップという。)電極は写真1のように超高真空のガラス容器に封入されいる。閉じ込めただけのイオンは、新幹線の7倍程の猛スピードで動き回っているのでとても観測できない。そこで、レーザ光をイオンに照射し、光の圧力でその動きを止めた。(この方法をレーザ冷却という。)

写真1: Yb+のレーザ冷却実験に使われたイオントラップイオントラップ
電極はガラス製の超高真空槽に設置されている。写真中央の円盤上に見える3枚の金色の電極がイオントラップを構成。3枚のうち中央の電極は内径5mmの円環で(写真では中空部分は見えない。)イオンはその中空部分の中央に閉じ込められる。(白色の部品は電気絶縁物)


写真2: レーザ冷却されトラップされたYb+の像
写真中央の明るい楕円の像がレーザ冷却されトラップされた多数個のイオンの蛍光。イオン集団の大きさは図の楕円の長径方向で300μm。イオン集団の右側の明るい部分はイオントラップ電極表面でのレーザ光の反射。この像は、超高感度カメラで光子計数法を用いて撮影された。
写真2はレーザを照射されたことよってイオンが発する蛍光を、超高感度カメラで撮ったもの。この写真は残念ながら数多くのイオンがトラップされている状態だが、それでもレーザ冷却によってイオンは減速されて、イオン集団全体が300μm程度の範囲に閉じ込められていることがわかる。


図: 閉じ込められたYb+イオン個数の測定(量子跳躍の観測)
Yb+イオンの蛍光を1個づつ消していくときの蛍光強度の時間変化。蛍光を発しているサイクルから蛍光を発さない状態へYb+を遷移させて蛍光を消す。蛍光の減少1ステップがイオン1個分の蛍光強度の当たる。この場合では、4個のイオンがトラップされていた。
閉じ込めたイオン数がごく少数のときには、その数はイオンの発している蛍光を1個ずつ消していくことで決定された。図はその実験時の蛍光強度で、蛍光の減少1ステップが、まさにイオン1個分の蛍光強度にあたる。図では4個のイオンが閉じ込められていたことになる。この測定では、蛍光を発しているエネルギー準位間とは別のエネルギー準位へ、イオンを遷移させてやり蛍光を消す。そこで、図のように蛍光の減少が一瞬で完了しステップ状にみえることは、イオンのエネルギー準位の変化が瞬時に完了していることを意味する。このことは、原子のエネルギー準位が変化するとき、それは瞬間的に起きるとする量子力学の原理(量子跳躍と呼ばれる)の検証になっている。

このように、イオンはわずか1個であっても量子跳躍信号を利用すれば高感度に検出が可能。現在、同研究室ではこの信号検出方法を利用して、単一、あるいは少数個のレーザ冷却されたイッテルビウムイオンを用いた可視光領域での周波数標準を実現を目指し、日夜研究を続けている。

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